「自分を知るワークシート」共同開発ストーリー|(株)ヒューマンフォーラム mumokuteki事業部
2021年2月21日、京都のアパレル企業(株)ヒューマンフォーラムのmumokuteki事業部のみなさまと、自分発酵を促進する「自分を知るワークシート」を共同開発しました。
今回のレポートでは、その開発ストーリーをご紹介していきます。
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mumokutekiは「いきるをつくる」をコンセプトに、上質な雑貨、衣類、食、農業、スクールなど、さまざまな角度から”いきる”を豊かにする提案をされているブランドです。
京都市中京区の寺町商店街で、ひときわ目を引くおしゃれな店舗をご存知の方も多いのではないでしょうか?

最近では、世の中に先がけてショッピングバックを廃止するなど、サステナビリティを意識した取り組みも積極的に進められているmumokuteki。
京北、美山には自社ファームを所有し、無農薬のお米や味噌・梅干しなどの生産も手がけておられます。つくった農作物や商品は自社のカフェで提供されており、生産・加工・販売を一手に行う6次産業にも取り組まれてきました。

そんなmumokutekiは、2018年から3期にわたって、こころ館が提供する「内発的イノベーション」を起こすための研修サービス「わたし研究室」を導入いただいたチームでもあります。

研修を導入する以前は、業務が多忙を極め、社内のコミュニケーションにすれ違いが起きるという課題を抱えていたというmumokutekiチーム。なかには「働く意味がわからない」「自分の仕事に価値を感じない」という声もあったそうです。
組織のコンセプトである「いきるをつくる」を、まずは社員自らが実現できる土壌づくりがしたい。一人ひとりの可能性がもっと発揮できる環境を、チーム全体でつくっていきたい。
働く意義や意味を見出して、mumokutekiで過ごす時間を価値のあるものにしてほしい。
事業部長・今出貴裕さんは、そんな思いから研修サービス「わたし研究室」の導入を決めたといいます。

年10回のプログラムのなかは、一人ひとりのワーク・アイデンティティを探求していきました。「自分はどんな人間で、これから働くなかで何を叶えていきたいのか」。業務内ではなかなか話す機会のない、お互いの考え方や価値観を聴きあっていきます。


そして研修を終わる頃には、
「支え合えるチームをつくりたい」
「ここで働いていてよかった、とみんなが思える職場にしたい」
など、これから組織のなかで実現したいこと(=研究テーマ)が、みなさんのなかから芽生えていたのでした。

研修の導入を決めた今出さんは、「わたしを研究した結果、人や組織の役に立とうとする気持ちが生まれていたことが印象的だった」と語ります。そして研修後のチームについて、「本音を語り合えるチームになりました。普段から、お互いがお互いのことを思いやっている様子が、はたから見てもよくわかります。会議も楽しくなり、みんなの笑顔が増えるようになって、以前とはまったく違うチームになりました」とコメントをくださいました。

さらに3年目の研修では、「自分らしさ」の枠を超えて、「mumokutekiらしさ」を考えるワークを取り入れました。このワークでは、ブランドコンセプトである「いきるをつくる」が自分にとってどのような意味のあるものなのかを考え、ブランドが叶えたい世界と、自分が実現したいこととの接点を見出していきました。

このように、3年間で少しずつ自分発酵が広がり、自分らしさを活かして活躍するメンバーが増えていったmumokuteki。
一方で、新たな課題も生まれていました。それは「わたし研究」を体験したことがないメンバーの自分発酵を、どのように支援していくかという課題です。
研修サービス「わたし研究室」の定員は15名程度であり、mumokutekiの社員全員が研修を受けようとすると、途方もない時間とお金がかかってしまいます。
ならば今度は、受講したメンバーが、社内に“自分発酵の輪”を広げていく役割になっていただこうと考えました。
そこで今回、「わたし研究室」に参加したリーダークラスのみなさんにお集まりいただき、社内で自分発酵する人を増やすためのツールを開発することにしました。

それが、「自分を知るワークシート」 なのです。

このシートは、5つの問いで構成されています。
それぞれの問いは連続しており、1から順に答えていくことで、最後には新たな気づきや次の行動指針が見えてくるように設計していきます。
これまで「わたし研究」のなかで、たくさんの問いに答えてきたメンバーのみなさん。
今度は仲間のために、「問いのデザイン」にチャレンジです。
まずはペアに分かれて、サンプルの問いに答えていただきました。


問いの構成を見てみると、最初は大枠を答える問いからはじまり、進んでいくほど詳細を深堀する問いになっていることがわかります。
また、はじめの方は事実ベースで答える問いですが、最後の方になるとその人にとっての意味づけを促す問いになっています。
こうした構成が、自分を深く知っていく手助けになっているようです。

実際に問いを体験してみた感想をうかがうと
「相手の答えを聞いて、今のその人ができるまでのプロセスを知ることができた」
「相手の考え方を知って、自分も取り入れたいと思った」
などのコメントをいただきました。問いかけあうなかで、自分を知ることはもちろん、仲間同士の相互理解も深まっていることがわかります。

さて、次はいよいよ、自分たちで問いを考える番です。
いきなり問いを考える前に、これから考える問いに答えることで、回答した人にどのような状態になってほしいのかを考えました。
みなさんからのご意見はこちら。
・長所や個性が自覚できている
・自分の自己実現と、組織のミッションがリンクしている
・ワーク・アイデンティティを築いている
どれも自分発酵や内発的イノベーションを進めるうえで重要なポイントです。
これらの希望を踏まえて、実際に5つの問いを考えてみました。


考えた問いは、ペアの方に読み上げてもらい、一度自分で答えてみます。
答えにくかった質問は、言い回しを変えてみるなど、徐々にブラッシュアップしていきます。

「5つ考えるのが難しい!」
「どんなステップを踏んだらわかりやすいんだろう?」
“その人のことを深く知るための問い”は、案外普段考えることがないもので、
みなさん頭を悩ませながら5つの問いを考え出しておられました。

時間の都合で、全員の方の問いを完成させることはできませんでしたが、
代表例を1つご紹介したいと思います。
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①あなたにとって、mumokutekiで働くとは何ですか?
②仕事をする上で心がけていることは何ですか?
③今の自分にとって、働く上で足りていないものは何ですか?
④それはなぜですか?
⑤それは、どうすれば解決しますか?
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こちらの問いを考えたリーダーさんは、「ミーティングでこの問いを使って、コミュニケーションのきっかけにしたいです」とさっそく活用を宣言してくださいました。
この記事を読んでいただいているみなさまも、ぜひ“mumokuteki”をご自身のチーム名や会社名に置き換えて答えてみてください。ひとりで考えるのはもちろん、他のメンバーと一緒にやってみると、さまざまな見方や考え方を知ることができてより深まっていくはずです。

今回のワークショップの冒頭で、
「コロナで社内のコミュニケーションが減ってきている」
「顔を合わせないなかで、メンバーに対する配慮を忘れそうになってしまう」
などの課題意識が上がっていたmumokutekiチーム。
元々人間関係の深いチームなので、このワークシートを活用して、よりつながりを深めていただけたらと思います。
実際にワークシートを使ってみた効果については、また別の記事でご報告します。
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今回のワークシートを活用することで、自分発酵を進めるためにアプローチする4つの「わたし」のうち、「他者は知らないが自分は知っている『わたし』」(B)、そして「自分は知らないが他者は知っている『わたし』」(C)への理解を深めることができ、自分発酵を後押しできるようになります。

ワークシートはWEBサイトに公開していきますので、ぜひご自身のチームや組織でご活用いただけましたら幸いです。
(研究員/青山絵美)